【聖書講座 #01】アダムとエバ
この回のポイント
人は神に禁じられた「善悪を知る木」を食べてしまいます。そして神は、罪人が「命の木」から取って食べ、永久に生きることを禁じられました。
第1回と第2回で学ぶ箇所では、人はますます神から離れて行きます。でも、ご安心ください。問題を解決するヒーロー「女のすえ」の登場もまた、ここで予告されているからです。聖書全体を貫く、とても長い物語の末に、聖書の最終章には「いのちの木」が再び登場し、人はそれを好きなだけ取って食べることができます。
創世記1~3章はその壮大な物語の「序章」なのです。

世界のはじまり
聖書は、「創世記」と呼ばれる書から始まります。この書は、神による天地創造がなされたことを伝えるとともに、これから始まる壮大な物語の主題を提示しています。
第1回のテーマとなる「アダムとエバ」も、創世記に登場するお話です。
英語のHistoryはHis story神の物語。神が天と地とを創造されたことによって、歴史がスタートしました。聖書で言う「歴史」とは、神が人類を救済する物語と言えます。しかし、全能者である神でさえも、人類を救済するのは容易なことではありません。聖書の記述をもとに計算すれば、すでに、6,000年あまりが費やされているのです。
第一の創造物語
創世記には二つの創造物語が記録されています。第一の創造物語は、秩序だった、やや抽象的叙述がなされていることもあり、のちの時代に書かれたとも言われています。
物語は、創世記の第1章1節からはじまります。このように、神は万物の創造に先立ち、「はじめ」、すなわち、時(約束)をスタートさせ、天と地とを創造されました。しかし、神に創造された地は「形なく、むなしく、やみが淵のおもてに」あり、その混沌とした状態をカバーするかのように、「神の霊が水のおもてをおおっていた」ことが記されています。
そして、世界が7日間で創造されたという話が続きます。第1日目に光と闇が分離され、第2日目に大空の上の水と下の水が分離されました。3日目には、海、大地、植物が、4日目には、太陽、月、星、5日目には、鳥と魚、6日目には、動物、そして人が創造されました。神はご自分のかたちに人を創造され、男と女とに創造されました。そして、7日目に休まれたのです。
聖書は、神が創造のわざを「良し」とされたことを語るとともに、7日目の安息の重要性についても示しています。
以上、第一の創造物語には、世界、植物、活動体、人の創造について叙述されていることをご紹介しました。
第二の創造物語
第二の創造物語は、第一の創造物語に比べ、具象的記述に特徴があることから、より古い年代に書かかれたとも言われています。こちらは、さきほどとは異なり、人の創造から物語が始まり、最後に女が創造されます。そのため、人間に重きを置いた記述であると言えるでしょう。ここからは、第二の創造物語をご紹介します。(創世記2:4~)
神は土のちり(アダマー)で人(アダム)を造り、命の息をその鼻に吹きいれられました。そして、人をエデンの園に置かれ、そこを耕し、守らせられました。神は、エデンの園の中央に「命の木」と、「善悪を知る木」をはえさせ、アダムに命じて言われました。
「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。しかし善悪を知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べると、きっと死ぬであろう」。
また神は、人がひとりでいることは良くないと考えられ、人のために助け手を作られました。しかし、ふさわしい助け手が見つからなかったため、神は人を深く眠らせ、そのあばら骨の一つを取って肉でふさがれ、そのあばら骨からひとりの女を造られました。そして、人のところへ連れてこられると、人は言いました。
「これこそ、ついにわたしの骨の骨、私の肉の肉。男(イーシュ)から取ったものだから、これを女(イシャー)と名づけよう」。その時、彼らは、ふたりとも裸でしたが、恥ずかしいとは思いませんでした。(創世記2:25)
ヘビの誘惑
神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾でした。へびは女に言います。
「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか」。
女は答えました。
「わたしたちは園の木の実を食べることは許されていますが、ただ園の中央にある木の実については、これを取って食べるな、これに触れるな、死んではいけないからと、神は言われました」。
すると蛇は言います。
「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」。
女がその木を見ると、食べるに良く、目には美しく、賢くなるには好ましいと思われたので、その実を取って食べ、夫にも与えたので、彼も食べました。
すると、ふたりの目が開け、自分たちの裸であることがわかったので、いちじくの葉をつづり合わせて腰に巻きました。
神が人に問う
彼らは、日の涼しい風の吹くころ、園の中に主なる神の歩まれる音を聞いたので、神の顔を避けて、園の木の間に身を隠したところ、主なる神は、人に呼びかけて言われました。
「あなたはどこにいるのか」。
人は答えました。
「園の中であなたの歩まれる音を聞き、わたしは裸だったので、恐れて身を隠したのです」。(創世記3:10)
神は言いました。
「あなたが裸であるのを、だれが知らせたのか。食べるなと、命じておいた木から、あなたは取って食べたのか」。
すると人は答えました。
「わたしと一緒にしてくださったあの女が、木から取ってくれたので、わたしは食べたのです」。
神は女に言いました。
「あなたは、なんということをしたのです」。
女は答えました。
「へびがわたしをだましたのです。それでわたしは食べました」。
神の宣告
そこで主なる神は、へびに言われました。
「おまえは、この事を、したので、すべての家畜、野のすべての獣のうち、最ものろわれる。おまえは腹で、這いあるき、一生、ちりを食べるであろう。わたしは恨みをおく、おまえと女とのあいだに、おまえのすえと女のすえとの間に。彼はおまえのかしらを砕き、おまえは彼のかかとを砕くであろう」。
神は、次に女に言われました。
「わたしはあなたの産みの苦しみを大いに増す。あなたは苦しんで子を産む。それでもなお、あなたは夫を慕い、彼はあなたを治めるであろう」。
神は、更にアダムに言われました。
「あなたが妻の言葉を聞いて、食べるなと、わたしが命じた木から取って食べたので、地はあなたのために、のろわれ、あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。地はあなたのために、いばらとあざみを生じ、あなたは野の草を食べるであろう。あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る。あなたは土から取られたのだから。あなたは、ちりだから、ちりに帰る」。(創世記3:19)
人類救済の主役「女のすえ」
神の宣告の中で、特に覚えておいていただきたいのは、神がへびに言われた、「女のすえ」という言葉です。実は、神による人類救済の物語の主役こそ「女のすえ」なのです。
さて、アダムはその妻をエバ(ハヴァ)と名づけました。エバとは、「すべて生きた者の母」という意味です。主なる神は、人とその妻のために皮の着物を造って、彼らに着せられました。
主なる神は、人が善悪を知るものとなったため、命の木からも取って食べ、永久に生きるかも知れないとお考えになり、エデンの園から追放されます。そして、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎを置いて、命の木の道を守らせられました。
この「命の木」は、最終回に学ぶ新約聖書の最後の書に「いのちの木」として、もう一度、登場します。
神に創造された人間は、善悪を知る木から取って食べたことで、死ぬ者となりました。神が、人類を救済する物語である聖書の主題は「死に勝つ」ことであり、その鍵は「女のすえ」にあるのです。
次回予告
さて、エデンの園を追い出されたアダムとエバはどうなったでしょうか。彼らには子供が生まれ、また新たな物語が綴られていきます。