【ワンポイント解説】終末論とは

この記事のポイント

キリスト教で終末とは、世の終わりという時間的な意味の他に、成就、完成といった意味も含む概念です。「終末論」はキリスト教神学の一分野になっています。今回は、終末論の基本的な意味や、ユダヤ教・キリスト教における終末の多様な考え方をご紹介します。

・終末論とは何か
・ユダヤ教と旧約聖書の終末論
・キリスト教における終末論

ポイント1:終末論とは何か

終末論は、英語ではeschatologyと呼ばれます。「最後」「終わり」を意味するギリシア語ἔσχατοςと、「論理」「教義」を意味するギリシア語λόγοςの合成語で、「終わりの事柄に関する教え」を意味します。

キリスト教神学の場合、終末論においては、イエス・キリストの再臨や最後の審判、死者の復活といった事柄が扱われます。

ただし、終末論という考え方自体は、キリスト教のみならず多くの宗教にも認められるものです。

キリスト教の終末論も、ユダヤ教の終末論を基に成立しています。

ポイント2:ユダヤ教と旧約聖書の終末論

初期ユダヤ教の終末論は、まずアモスなどの預言者によって語られました。ただし、彼らの語る終末とは、宇宙や歴史そのものの終わりではなく、歴史における自分たちイスラエル民族の終わりでした。

その後バビロン捕囚を経て、ユダヤ教の終末論は、地上における政治的なメシアを待望する、より具体的なものとなっていきます。さらに、歴史の終焉や死者の復活、最後の審判といった、より大規模で宇宙史に目を向けた終末論が展開されます。

このようにユダヤ教において育まれた終末思想が、イエスによって継承・再解釈され、さらに後の教会において発展していきました。

ポイント3:キリスト教における終末論

イエスの宣教活動の中心に据えられたメッセージは、「神の国の接近」でした。洗礼者ヨハネが差し迫った審判を訴えたのに対し、イエスの唱える神の国とは、祝宴のイメージや親しみある父としての神のイメージと結びついていました。

イエスの復活と昇天後、原始教会では、終末に到来する「人の子」はイエスに他ならないとして、イエスの再臨が待望されるようになります。そして、イエスの復活は、万人の復活を先取りする出来事として解釈されます。

その後、キリスト教の教義が体系化されるにつれて、再臨と千年王国の関係――たとえば、再臨が先か、千年王国実現が先か、そもそも千年王国は字義通りのものなのか――また、終末が実現する時が過去か、現在か、未来かについて、多くの議論がなされてきました。他方、知り得ない事柄については神に委ねるべきであるとして、終末についての詳細な議論を避ける神学者も登場しました。

まとめ

・キリスト教の終末論はユダヤ教のそれを基に成立
・バビロン捕囚を経て、より具体的終末論に発展
・イエスの再臨と千年王国の関係で分かれた終末論

以上、終末論の基本的な意味とその歴史的展開をご紹介しました。教派や神学者によって終末論は異なりますが、終末を現在の私たちの生活と結びついたものと理解することで、信仰生活もより豊かにされるのではないでしょうか。

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