【聖書講座 #03】アブラハム

この回のポイント

テキスト今回から神の人類救済計画が始まります。神はアブラハムを選び、その一族(後のユダヤ民族)と契約を結ばれます。

神が特定の人々を選んで契約される、というのは、聖書の重要主題です。では、選ばれなかった私たちは、どうなるのでしょうか。

実は、この講座の後半になると、その道が開かれてくるのですが、まずは「選民の歴史」を学んでいきましょう。

神と人との「契約」は日本人にとって馴染みの薄い概念ですが、今日の世界情勢、特に中東情勢に深くかかわっている、とてもホットな話題です。

ノアから10代目にあたるアブラハム

先回は、ノアの洪水で人類が滅ぼされた後、ノア一族から地上の諸国民が分かれ、今度はバベルの塔を建てて神に逆らった、というお話をしました。そして今回からは、神が悪に満ちた世から人々を救い出す、壮大なドラマが始まります。

今回のタイトルは「アブラハム」ですが、きょうは、アブラハム、イサク、ヤコブの3代にわたる物語をお話ししましょう。さて、ノアの3人の息子のひとりであるセムから数えて10代目の人物、アブラム(後のアブラハム)が、きょうのお話の最初の主人公です。

イシマエルの誕生

アブラムはカルデヤのウルで生まれ、父テラとともにメソポタミアのハランに移りますが、テラはその地で一生を終えます。

主はアブラムを祝福されますが、アブラムは75歳の時、妻サライと、甥のロトと、すべての財産を携え、ハランで獲た人々とともに、主が示された地、カナンへと向かいました。(創世記12章)カナンは現在のイスラエルの付近だと考えられています。

アブラムの妻サライには子がいなかったため、彼女はエジプト人の女奴隷ハガルをアブラムの側女(そばめ)としました。そして、アブラムが86歳の時、ハガルは男の子を産み、イシマエルと名付けました。

彼は現在のアラブ人の祖先だとされています。

アブラハム契約

アブラムが99歳の時、主はアブラムに現れて言われました。

「わたしはあなたと契約を結ぶ。あなたは多くの国民の父となるであろう。あなたの名は、もはやアブラムとは言われず、あなたの名はアブラハムと呼ばれるであろう。わたしはあなたを多くの国民の父とするからである」。(創世記17章4-5節)

ここで神とアブラハムが結んだ「契約」は、「旧約」と言い、後にイエス・キリストを通じて結ばれる契約を「新約」と言います。

さらに神は、カナンの全地を永久の所有としてアブラハムとその子孫に与えることを約束し、彼の子孫の男子に割礼を受けることを命じられました。

また、神はサライにも「サラ」という新しい名をお与えになり、90歳になるサラに子供が生まれることを約束されます。

そして、生まれた男の子イサクがアブラハムの契約を受け継ぐことになるのです。

イサクの燔祭

ところが何年か後に、神はその大切な子であるイサクを燔祭(焼き尽くす献げ物)としてささげるようにと、アブラハムに命じられます。それは彼を試みるためでした。

アブラハムがイサクに手をかけようとしたまさにその時、主の使がアブラハムにイサクを殺してはならないと語り、アブラハムは、目の前にいた一頭の雄羊を、イサクのかわりに燔祭としてささげました。

イサクの二人の息子、エサウとヤコブの誕生

サラの一生は127年でした。サラはヘブロンで死に、マクペラの洞窟に葬られました。

アブラハムは年が進み、彼の親族からイサクの結婚相手を探すため、故郷にしもべを遣わし、リベカをイサクの妻として迎えました。イサクがリベカと結婚した時、彼は40歳でした。

イサクの妻リベカはふたごを身ごもり、主はリベカに、「兄は弟に仕えるであろう」と告げられます。

月が満ちてリベカは出産し、先に出てきた全身が毛衣のような子をエサウ(毛深い)と名付け、後から出てきた子は兄のかかとをつかんでいたため、ヤコブ(踵を握る者)と名付けました。

リベカがふたりを産んだ時、イサクは60歳でした。その後、アブラハムは175年の生涯を閉じ、マクペラの洞窟にサラとともに葬られました。

長子の特権を得たヤコブ

イサクの二人の子は成長し、兄のエサウは巧みな狩猟者になりましたが、弟のヤコブは穏やかな人で、天幕に住んでいました。イサクはエサウを愛しましたが、リベカはヤコブを愛していました。

ある日のこと、野から疲れきって帰ってきたエサウは、ヤコブが作った煮物と引き換えに、長子の特権をヤコブに譲ってしまいます。当時、長男は大きな相続権を持っていました。

イサクは年老いて目がかすんで見えなくなった時、エサウを呼んで、好物の料理を作ってもらい、死ぬ前に食べ、エサウを祝福したいと言いました。

それを聞いたリベカは、エサウが獲物を取りに出かけた隙に、イサクの好物の料理を作り、ヤコブにエサウの晴れ着を着せ、子ヤギの毛皮をヤコブの腕や首に巻きつけて扮装させ、好物の料理とパンを持たせてイサクのもとへ行かせました。

イサクは様子がおかしいと思ったものの、ヤコブに祝福を与えました。それを知ったエサウはヤコブを憎み、殺そうと謀ります。

リベカは一計を案じ、ヤコブをイサクに祝福してもらい、結婚相手を見つけるために、ハランに住むリベカの兄ラバンのもとに送り出しました。

ヤコブがレアとラケルを娶る

テキストヤコブがハランに向かう途中、彼は天に達するはしごを神の使たちが昇り降りする夢を見ます。そして翌朝、ヤコブは枕としていた石を立てて柱とし、その頂に油を注ぎ、その場所をベテルと名付けました。

ヤコブは旅を続け、伯父ラバンのもとを訪れます。ラバンにはレアとラケルという、二人の娘がいました。ひと月ほど経ち、ラバンはヤコブにどんな報酬を望むかと問うたので、ヤコブは下の娘ラケルを妻にできるなら、七年間ラバンのもとで働くと答えました。

七年が経ち、ラバンは祝宴を開きましたが、夜になるとラケルではなく、姉のレアをヤコブのもとに連れて行きました。

翌朝、それに気付いたヤコブがラバンを問い質すと、もう七年間働き続けると約束すれば、レアとの一週間の婚礼の祝いの後、ラケルも妻として与えると、答えが返ってきました。

こうして、ヤコブはレアとラケルを妻とし、11人の息子を得ました。

ヤコブが「イスラエル」と呼ばれるように

ラバンやその息子たちとヤコブとの関係が悪化した時、主はヤコブに先祖の土地に帰るようにと言われました。ヤコブはラケルとレア、子供たちを連れてラバンのもとから逃げ出します。

ヤコブが逃げたことを知ったラバンは彼らに追いつきますが、和解してヤコブと契約を結び、翌朝、自分たちの家に帰って行きました。

ヤコブ一行は旅を続け、現在のヨルダンにあるヤボク川(ザルカ川)を渡りましたが、ヤコブは独り後に残ります。

すると、何者かが夜明けまでヤコブと格闘し、その人はヤコブの腿の関節を打ったため、格闘している間にヤコブの腿の関節は、はずれてしまいました。

その人は、「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」と、言いました。こうして、ヤコブの子孫たちは「イスラエル」と呼ばれるようになりました。

朝になり、ヤコブはヤボク川の南岸で兄のエサウと久しぶりの再会を果たし、和解します。

一同がさらに道を進んでいくと、ラケルは現在のベツレヘム付近で産気づき、ベニヤミンを産みますが、大変な難産の末、息を引き取りました。こうして、ヤコブの息子は12人になりました。彼ら12人は、後にそれぞれが部族となり、「イスラエルの十二部族」と呼ばれるようになりました。

ヨセフがエジプトに売られる

ヤコブはかつて父が寄留していたカナンの地に定住しました。ヤコブはとりわけヨセフを可愛がり、裾の長い晴れ着を彼のために作るほどでした。ヨセフは、兄たちのことを父ヤコブに告げ口したので、兄たちはヨセフを憎みました。

ある時ヨセフは夢を見て、それを兄たちに語りました。
「わたしたちが畑の中で束を結わえていたとき、わたしの束が起きて立つと、あなたがたの束がまわりにきて、わたしの束を拝みました」。

それを聞いた兄たちは、ますますヨセフを憎みました。

そして、ついに、怒った兄たちはヨセフを穴に投げ入れ、父ヤコブに「ヨセフが野獣に襲われて死んだ」と報告します。ヤコブはそれを信じ、幾日もの間、嘆き悲しみました。しかし、実はヨセフはエジプトに売られ、不思議な出来事を通じて一家を救い出すことになるのです。

次回予告

今回は、アブラハム、イサク、ヤコブという聖書の重要人物を学びました。特に、アブラハムが神と結んだ「契約」はたいへん重要で、新約聖書までつながっているものです。

次回は、エジプトでのヨセフのお話から始めてゆきます。どうぞ、お楽しみに。

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