【聖書講座 #06】ダビデ王
この回のポイント
約束の地に入ったイスラエルの民は、やがて王制を導入します。二代目の王ダビデは、多くの罪を犯しながらも、神に愛されました。
しかし、ダビデが神殿を建てようとすると、神はそれを許可せず、代わりにダビデの家を「長く」守ると約束されたのです。
これは、メシア出現を示す約束と考えられています。王が罪を犯せば民全体が罰を受け、王が正しければ民全体が祝福される、という図式は、完全な王であるメシアの出現によって、イスラエル民族の使命が一気に完遂される希望を示すものでした。
エリコの陥落
前回は、ヨシュアに率いられて、イスラエルの民が約束の地カナンに入る所までを学びました。今回は、カナンからのお話をします。
イスラエルの人たちが、カナンの地で最初に攻めたのはエリコという町でした。
エリコは城壁に囲まれた難攻不落の町でしたが、イスラエルの人々が六日間、その町のまわりを行進し、七日目に七回まわってショファー(角笛)を吹き鳴らすと、城壁が崩れ、町はイスラエル人のものになったのです。
外敵との戦い
そして、イスラエルの人々はカナンの地に定住しましたが、その土地での暮らしは楽なものではありませんでした。「ミデアン人」や「ペリシテ人」という強い敵がいて、攻めてきたからです。
イスラエルの人々は、彼らと戦わなければなりませんでした。「士師記」には、それらの外敵との戦いが記録されています。
ギデオンという英雄は、たった三百人を率いて十二万人のミデアン人の軍隊と戦いました。
また、サムソンという怪力の持ち主も、イスラエルの人々を助けました。しかし、サムソンは女性に弱かったようで、力の秘密をデリラというペリシテ人の女性に教えてしまいます。彼の力の秘密は髪の毛にあったのです。サムソンとデリラの物語は、オペラや映画の題材にもなりました。
ダビデの曽祖母、ルツ
「ルツ記」には、この時代にイスラエルの家に嫁いだ外国人女性ルツの物語が記されています。ルツはイスラエル人のボアズと結婚し、ダビデの曾祖母にあたります。
「預言者」から「王」へ
次の書は「サムエル記」です。サムエルは、ギデオンやサムソンのような英雄ではありませんでしたが、幼い頃から、神と話ができる特別な力を持っていました。
そういう人々を、聖書では「預言者」と言います。彼は神の言葉を人々に伝え、国をまとめました。
サムエルが年老いたとき、人々は他の国々のように王を選んでほしいと言い出しました。サムエルが主に祈ると、主は民の声に従うようにと言われたため、王を立てることになりました。
最初に王になったのがサウルという人物でした。サムエルは、サウルに油を注いで王に任命します。古代イスラエルでは、王に任命するとき、油を注いだからです。
しかし、サウルは王となってからも主の御声に聞き従わず、アマレク人との戦いで得た戦利品を自らの判断で主への供え物とするなど、サムエルを嘆かせ、主もサウルをイスラエルの王にされたことを悔いられました。
ダビデに油が注がれる
主はサムエルに、ベツレヘムに住むエッサイの息子の中に王となるべき人物がいることを告げられ、サムエルは、ダビデという少年に油を注ぎました。
その日以来、主の霊がダビデに降り、サムエルは故郷のラマに帰りました。
ダビデとゴリアテ
さて、ペリシテ軍の戦士で名を「ゴリアテ」という身長が3mもある大男が、イスラエルの人々の前に現れ、一騎打ちをしようと繰り返し挑発し、イスラエルの人々をはずかしめたため、困ったサウル王は、ゴリアテを倒す者には多額の報奨金と王女を与え、税を免れさせることを約束しました。
少年ダビデが、ゴリアテの挑戦を受けようとしていることを知ったサウル王は、自分の鎧や剣をダビデに着せようとしましたが、ダビデはいつも持っている羊飼いの杖と、石投げを持ってペリシテ人ゴリアテの前に進み出ました。聖書の言葉を読んでみましょう。
ペリシテびとはダビデに言った、
「さあ、向かってこい。おまえの肉を、空の鳥、野の獣のえじきにしてくれよう」。
ダビデはペリシテびとに言った、
「おまえはつるぎと、やりと、投げやりを持って、わたしに向かってくるが、わたしは万軍の主の名、すなわち、おまえがいどんだ、イスラエルの軍の神の名によって、おまえに立ち向かう。きょう、主は、おまえをわたしの手にわたされるであろう。わたしは、おまえを撃って、首をはね、ペリシテびとの軍勢の死かばねを、きょう、空の鳥、地の野獣のえじきにし、イスラエルに、神がおられることを全地に知らせよう。またこの全会衆も、主は救を施すのに、つるぎとやりを用いられないことを知るであろう。この戦いは主の戦いであって、主がわれわれの手におまえたちを渡されるからである」。
そのペリシテびとが立ち上がり、近づいてきてダビデに立ち向かったので、ダビデは急ぎ戦線に走り出て、ペリシテびとに立ち向かった。
ダビデは手を袋に入れて、その中から一つの石を取り、石投げで投げて、ペリシテびとの額を撃ったので、石はその額に突き入り、うつむきに地に倒れた。(サムエル記上 17:44-49)
ゴリアテが倒れると、ペリシテ軍は総崩れとなり、イスラエル軍は大勝利を収めました。そして、ダビデは約束通りサウル王の娘のミカルを妻にします。
サウル王と息子ヨナタンの死
ところが、あまりにもダビデの名声が高まったため、サウル王は嫉妬のあまりダビデを殺そうとします。
ダビデは何年間もサウル王から逃げ回ることになりますが、神によって油を注がれたサウル王に対する敬意を忘れませんでした。
「サムエル記」は上下2巻に分かれていますが、上巻は、サウル王と息子のヨナタンが戦死するところで終わっています。
ダビデが王に即位
サムエル記の下巻は、ダビデがユダの王に即位するところから始まります。それまで、イスラエル王国の中心地は、サウルが住んでいたギベアという所(エルサレムの北)でしたが、ダビデは王国の首都をエルサレムと定めました。ちょうど紀元前1000年頃のことです。
そしてダビデは契約の箱をエルサレムに移します。それまで契約の箱は天幕(テント)の中に置かれていたのですが、ダビデは立派な家を建てて、そこに契約の箱を収めようと考えました。
ところが神は、その必要は無い、と言われ、逆にダビデの家(家系)を守ると約束されたのです。これは、キリスト出現につながる重要な約束だと考えられており「ダビデ契約」とも呼ばれています。
ダビデは竪琴の名手で、詩人でもあり、多くの歌を残しました。(詩篇23篇も有名)
ダビデの犯した罪
ダビデはすばらしい人で神に愛されましたが、罪も犯しました。
彼は、ウリヤという部下の妻、バテシバという女性と不倫関係になり、それを隠すために、夫のウリヤを殺してしまったのです。これにより、神の怒りを買ったダビデは、悔い改めの歌を残しています。(詩篇51篇)
主はダビデの悔改めを受け入れられましたが、結局、ダビデとバテシバとの間に生まれた子供は死んでしまいました。しかし、次に生まれた息子のソロモンは、ダビデの後継者となります。
ダビデは多くの間違いを犯しましたが、どうすれば神から赦しを得られるかを、よく知っていました。彼の作った詩は、今日でも読む人の心に励ましを与えてくれます。
次回予告
今回は「サムエル記」の上下巻を中心に学びましたが、次回はその次の書である「列王記」の上下巻を学びます。これらの書とほぼ同時代のことは、「歴代志」の上下巻でも繰り返し語られています。
ダビデは約40年にわたって国を支配しました。前961年、ソロモンが王になると、イスラエルは最も繁栄する時代を迎えます。その時代のことについては、次回で学ぶことにしましょう。