【聖書講座 #04】出エジプト
この回のポイント
神とアブラハムが交わした契約は、それから400年以上の時を経て、初めて本格的に効力を発揮します。
エジプトで奴隷になっていた民を、神は契約のゆえに救う「贖う」(あがなう)のです。「贖う」は、誰かに売っていた自分の財産を、お金を払って「買い戻す」こと。
後に「罪の奴隷」になっている人の魂を、神が「キリストの血」という代価を払って買い戻す、という新約聖書の主題にも関係しています。
ヤコブが可愛がったヨセフ
先回は、アブラハム、イサク、ヤコブという聖書の重要人物を学びました。特に、アブラハムが神と結んだ「契約」はたいへん重要で、新約聖書までつながっているものです。
また、ヤコブが12人の息子のうち、とりわけヨセフを可愛がっていたこと、そして兄たちがヨセフを憎み、彼を穴に投げ入れ、エジプト人に売ったことをお話ししました。
今回は、舞台をエジプトに移し、ヨセフの続きの物語を確認し、その後、イスラエルの民がエジプトを脱出するまでのお話を致しましょう。
宮廷の責任者となり、家族を救ったヨセフ
さて、エジプトに売られたヨセフは、その後、ファラオの役人の侍従長に仕えました。
ある時、彼はファラオの夢を解き明かして、エジプトの国が7年間の豊作の後、7年間の飢饉に見舞われることを予言します。それにより、ヨセフは宮廷の責任者に任命され、オンの祭司ポテペラの娘アセナテを妻として迎えました。(創世記41章)
7年間の飢饉は、ヨセフの父ヤコブと兄たちが住んでいたカナンの地まで広がります。ヤコブは、穀物を買うためにヨセフの10人の兄たちをエジプトに向かわせました。
ヨセフはエジプトの司政者として穀物を販売する監督をしており、兄たちが来たことに気づきましたが、兄たちはその監督がヨセフだとは気づきませんでした。
しばらくして、ヨセフは自分の素性を兄弟に明かし、家族の命を救うために神が自分を先にエジプトに遣わされたのだと語り、兄たちを責めることはありませんでした。
そして、ヤコブと家族をエジプトに連れて来るようにと勧めます。ヤコブたちは一家を挙げてエジプトへ行き、ヨセフと再会します。そして彼らは、ゴセンの地に定住しました。
ヤコブとヨセフの遺言
ヤコブは死期が近づいた時、ヨセフのふたりの息子、マナセとエフライムを自分の子供にしたいと願い、さらに自分の息子たちを呼び寄せ、彼らを祝福しました。
ヤコブはエジプトで17年生き、147年の生涯を閉じました。その遺体は遺言に従い、エジプトから運び出され、アブラハムとその家族と同じ、マクペラの洞窟に葬られました。(創世記50章)
ヨセフは父の家族と共にエジプトに住み、110歳まで生き、兄弟たちに言いました。
「わたしはやがて死にます。神は必ずあなたがたを顧みて、この国から連れ出し、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地に導き上られるでしょう。その時、あなたがたはわたしの骨をここから携え上りなさい」。(同50:24-25)
イスラエルの民の男児殺害が命じられる
そして約400年の時が流れ、イスラエルの民は、エジプトでおびただしく数を増していきました。
その頃、ヨセフのことを知らない新しいファラオがエジプトを支配し、イスラエルの民に脅威を感じ、生まれた子が男児であったときには殺害するようにと命じます。
王女がモーセを引き取る
ファラオの命令が下って後、レビ族のある夫婦の間に二人目の男の子が誕生します。その子を助けるため、家族はパピルスの籠を防水してその子を寝かせ、ナイル川の葦の茂みの間に置きました。
すると、水浴びに来たファラオの王女が籠の中に赤子がいるのを見つけて、不憫に思い、乳母を見つけて育てさせることにしました。実は、その乳母はその赤子の生みの母でした。
その子が大きくなると王女は彼を引き取り、モーセと名付けて言いました。
「水の中から私が引き出したからです」。(出エジプト記1:10)
モーセがエジプト人を殺害し、ミデヤンに逃れる
モーセは成人し、エジプト人が同胞のヘブライ人を打っているのを見て、そのエジプト人を打ち殺し、死体を砂に埋めました。
そのことを知ったファラオは追手を遣わしましたが、モーセは既にミデヤンの地に逃れた後でした。モーセは、その地の祭司であるエテロの娘チッポラと結婚し、ゲルショムという男の子を授かりました。
さらに長い年月が経ち、ついに神がイスラエルの民を救われる時が来ました。
神がモーセに語りかける
モーセは舅エテロの羊の群れを飼っていましたが、ある時、神の山ホレブで燃え尽きることのない柴の中から神が語りかけられる声を聞きます。
「……足からくつを脱ぎなさい。あなたが立っているその場所は聖なる地だからである」。
さらに、神はモーセを用いてイスラエルの民をエジプトから導き出させようとしておられることを告げられ、「わたしは、有って在るもの」と、ご自身の名を明かされました。(出エジプト記3:14)
モーセが、そのような重い任は負いきれないと言いますと、神はモーセに手に持っている杖を地面に投げるように命じられました。杖はへびにかわり、その尾を取ると、再び杖に戻りました。
モーセ、エジプトへ戻る
主はモーセにエジプトに帰るように促し、モーセは妻子を連れ、手には杖を携えてミデヤンの地を出発しました。主はモーセにファラオの心をかたくなにされることを告げられ、モーセは、エジプトへ向かう途中、神の山ホレブで兄のアロンと会い、主の言葉を彼に伝えました。
その後、モーセとアロンはファラオのもとに行き、神がイスラエルの民をエジプトから去らせ、荒野で祭をさせるようにと命じられたことを告げました。しかし、ファラオはイスラエルの民にさらに重い労役を負わせ、事態は悪化するばかりでした。
神はモーセに言われました。
「……それゆえ、イスラエルの人々に言いなさい、『わたしは主である。わたしはあなたがたをエジプトびとの労役の下から導き出し、……あなたがたをあがなうであろう。わたしはあなたがたを取ってわたしの民とし、わたしはあなたがたの神となる。……わたしはアブラハム、イサク、ヤコブに与えると手を挙げて誓ったその地にあなたがたをはいらせ、それを所有とし、与えるであろう。わたしは主である」と。
その後もモーセとアロンはファラオのもとを訪れ、神の言葉を伝え、アロンは杖を持ってしるしを行いましたが、ファラオは決して彼らの言うことを聞きませんでした。このときモーセは80歳、アロンは83歳でした。
十の災い
ファラオの心は依然としてかたくなであったため、主は十の災い(血、蛙、ぶよ、あぶ、疫病、はれもの、雹、いなご、暗闇、エジプトの初子の死)を起こすことをモーセに告げられ、そのとおりに災いが起こりました。
最後の災いは初子の死でした。その夜、イスラエルの民は家族ごとに小羊1頭を食べ、家の入口の鴨居と柱にその血を塗るようにと、神は命じました。主は、エジプトの国中の初子はすべて撃たれましたが、血が塗られた家は「過ぎ越」されたのです。(出エジプト記11-13章)
ファラオはエジプトのすべての初子が撃たれたのを見てモーセとアロンを呼び出し、エジプトからイスラエルの民を追放しました。彼らがエジプトに住んでいた期間は430年でした。
また、主はモーセとアロンに、この出来事を記念して過越の祭、初子の奉献、除酵祭を守るようお命じになりました。
ファラオ、イスラエルの民を去らせる
さて、ファラオがイスラエルの民を去らせたとき、神は彼らがペリシテ人との戦いを避けられるように、紅海沿いの荒野の道に迂回させられました。主は、昼は雲の柱、夜は火の柱によって民を導かれました。モーセはヨセフの遺骨を携え、民と共に行進を続けました。
ところが神は、ファラオの考えを一変させ、ファラオは自らの軍勢を率いてイスラエルの人々の後を追い、彼らに追いついてしまいました。眼前には紅海が広がっています。
あわやというとき、主はモーセに杖を高く上げ、手を海に向かって差し伸べるように言われ、海を二つに分けさせました。海は乾いた地に変わり、イスラエルの民は無事に渡ることができましたが、続いてファラオの全軍が海に入ると、水は元に戻り、兵士はみな溺れ死んでしまいました。
民は大いなる御業を見て主を畏れ、主とその僕モーセを信じました。(出エジプト記14章)
次回予告
次回はイスラエルの民がモーセに率いられ、荒野から約束の地イスラエルに向かうお話をします。どうぞお楽しみに。