【ワンポイント解説】旧約聖書とは
旧約聖書は、39の文書から成る書物!
旧約聖書は39の文書から成り立っている書物で、それぞれの文書は独立したストーリーであると同時に、それらはシリーズものの映画のように連続したストーリー性をもっています。
旧約聖書はユダヤ教、キリスト教の聖典とされていますが、39巻の並び方は異なっています。ここでは、キリスト教の聖書の並びにそって、それぞれの文書の特徴とポイントをご紹介いたします。
モーセ5書
「創世記」
まず、はじめに収められているのが「創世記」です。世界や人の創造、また人が死ぬ存在となったことが、記されています。また、神がイスラエルを選びの民とする契約をアブラハムと結んだこと、つまり旧約を結んだことも、記録されています。
「出エジプト記」
次の「出エジプト記」では、イスラエルの民がエジプトでの奴隷状態から解放されるストーリーが展開されます。それはアブラハム契約に含まれていた約束の実現とも言えます。(創 15:13)
「レビ記」
「レビ記」にはシナイ山で与えられた法、祭司職の祭儀に関する規定がまとめられています。
「民数記」
イスラエルの民は律法を授かってから40年を荒野で過ごし、ヨルダン川の東側にいたりました。その歴史を伝えているのが「民数記」です。
「申命記」
民を率いてきたモーセはヨルダン川の東から約束の地を見せられましたが、そこに入ることは許されませんでした。「申命記」は、モーセによる告別説教として書かれています。
これら5つの書はモーセと関わりが深い書物であると考えられ、モーセ5書、ユダヤ教ではトーラーと呼ばれています。
歴史書
モーセ五書の次にくるのは歴史書です(ヘブライ語正典では「前の預言書」)。
「ヨシュア記」
モーセの後継者となったのはヨシュアでした。「ヨシュア記」は、イスラエルの民がヨシュアの指揮によってカナンを征服したと記しています。この時イスラエルには王がありませんでした。
「士師記」
ヨシュアの死後から、イスラエルに王制が敷かれるまでの間、指導者をつとめていたのが士師で、彼らの歴史を記しているのが「士師記」です。
「ルツ記」
この時代を生きたとされる異邦人女性のルツの物語は「ルツ記」に記されています。彼女はダビデ王の曽祖母となり、イエスの系図にまでその名を連ねています。
「サムエル記」「列王記」
上下巻に分かれている「サムエル記」と「列王記」は、イスラエルに王制が導入されてから、王国が南北に分裂し、まず北の王国が滅ぼされてから、南の王国が滅ぼされる歴史を伝えています。その中には、民に神の言葉を伝える人、預言者も登場します。
よりナショナリスティックな歴史書
それに続く歴史書はナショナリスティックな色彩をより強く持っています。
「歴代誌」
「歴代誌」は、南のユダ王国の滅亡の理由を応報思想によって説明する叙述が特徴的です。ユダヤ人たちは王国の滅亡時にバビロンに捕らえられていきましたが、70年後にシオンに帰還します。
「エズラ記」「ネヘミヤ記」
「エズラ記」と「ネヘミヤ記」は、この物語を第二の出エジプトとして描きました。
「エステル記」
ユダヤ人のシオンへの帰還を可能にしたのはペルシャ帝国のクロス王でしたが、ペルシャ帝国内でユダヤ人迫害がおこりました。「エステル記」は、その危機から民を救った女性、エステルの物語が記されています。この書には神の名が出てこないことでも知られています。
知恵文学
「ヨブ記」「詩篇」「箴言」「伝道の書」
さて、ナショナリスティックな傾向が強いとされる歴史書群のあとに「ヨブ記」「詩篇」の一部、「箴言」「伝道の書」などの知恵文学が来ます。「応報思想」によって説明できない不条理に対する答え、知恵について教えている書とも言えます。
「雅歌」
「雅歌」は旧約聖書中では異色の書で、この書にはエステル記と同様に一度も神の名が出てきません。さらに男女の情熱を率直に歌い上げる恋愛叙情詩の形式であったため、正典として認めるかが長らく議論されていました。しかし、ラビ・アキバが「雅歌は至聖所」と述べ、雅歌を擁護したことも、この書が聖書中に収められる一因になったという説があります。
三大預言書と「哀歌」
旧約聖書の後半部分を占めているのが預言書です。それぞれの預言書は異なる文脈を持つ上に、形式も微妙に異なっていて、時代順に並んでいるわけでもありません。ただ、預言書は大きく、三大預言書と十二小預言書に分けられます。
「イザヤ書」「エレミヤ書」「エゼキエル書」
三大預言書と呼ばれているのが、「イザヤ書」「エレミヤ書」「エゼキエル書」です。王国の分裂後、まず北のイスラエル王国が滅ぼされましたが、南のユダ王国はその後もしばらく存続しました。その南王国で活躍したとされる預言者がイザヤ、エレミヤです。
しかし、結局南のユダ王国も滅亡し、民はバビロンに捕囚されました。エゼキエルはそのバビロン捕囚時代に活躍したとされています。
「哀歌」
「哀歌」は預言書ではありませんが、エレミヤの作と考えられてきたことから、エレミヤ書の後ろに置かれていると考えられます。この書には、南のユダ王国の滅亡と、バビロン捕囚にともなう苦しみや、痛みをテーマにした詩が綴られています。
黙示文学と十二小預言書
「ダニエル書」
三大預言書と十二小預言書の間には、バビロン捕囚時代に活躍した預言者ダニエルの名を冠した「ダニエル書」があります。この書は比喩的表現によって、神の働きによる新しい時代の到来への期待を示す形式、つまり黙示文学という形式で書かれています。
「ヨエル書」「ゼカリヤ書」
十二小預言書の中にも、黙示文学的傾向を強くもつものがあるのですが、「ヨエル書」や「ゼカリヤ書」がこれに該当します。
神の審判を語った「アモス書」「ホセア書」「ミカ書」
時代はまた戻りますが、預言者アモスは北のイスラエル王国に対する「審判」を預言しました。「アモス書」同様に、「ホセア書」「ミカ書」などもこのような神の審判を警告しています。
民を励ました「ナホム書」「ハバクク書」「ゼパニヤ書」
一方で、北王国を滅ぼしたアッシリアの滅亡を語り、民を励ましたのが「ナホム書」「ハバクク書」「ゼパニヤ書」です。
「ヨナ書」
預言者ヨナは敵国アッシリアで、民に悔い改めを促したとされています。
「オバデヤ書」
しかし、結局ユダ王国はバビロン滅ぼされ、民は捕囚されました。「オバデヤ書」は、バビロンに加担したエドムの滅亡を預言しています。
「ハガイ書」「マラキ書」
最終的に民はエルサレムに帰還しますが、帰還後、民はその目的を忘れてしまいました。そんな民を覚醒するために書かれたと考えられているのが「ハガイ書」、「マラキ書」と言えるでしょう。
まとめ
以上が旧約聖書におさめられているそれぞれの物語の概要でした。旧約聖書のストーリーは新約聖書の基礎となっています。聖書の全文は無料で公開されていますので、興味を持たれた箇所があったら、ぜひその箇所を開けて読んでみてください。