【ワンポイント解説】共観福音書とは

この記事のポイント

新約聖書の冒頭には、イエス・キリストの言行録である福音書が4つ収録されています。そのうちヨハネを除く3つは、内容や構成が似ていることから「共観福音書」と呼ばれます。

とはいえ、その3つの福音書もそれぞれ異なる特徴を持っていますので、今回はその特徴をご紹介してまいります。

ポイント1:マタイによる福音書

【特徴1】教会の権威の重視

マタイ福音書の著者は、教会の権威を重んじています。教会という言葉が登場する福音書は、マタイだけです。イエスはペトロに「わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる」(マタイ16:15-18)と仰いました。

【特徴2】ユダヤ的伝統の重視

著者はまた、イエスを律法の成就者と見做しています。イエスは自身が来られた目的を「律法や預言者を廃止するため」ではなく、むしろ「完成するため」であるとします(マタイ5:17)。

マタイによれば、イエスは旧約聖書において預言されたメシアです。マタイ福音書は、イエスがダビデの子孫であることを示す系図から始まりますが、これは、ユダヤ人たちが、メシアはダビデの子孫から出ると信じていたからです。

ポイント2:マルコによる福音書

【特徴1】神の子イエス

マルコ福音書の著者は、イエスを神の子と見做します。マルコ福音書は「神の子イエス・キリストの福音の始め」という文言から始まり、最後には十字架上のイエスを見た百人隊長が「本当に、この人は神の子だった」と告白します(マルコ15:39)。

【特徴2】人間イエス

ただし、著者はイエスの人間としての活動に焦点を当てています。マルコにはイエスの奇蹟や癒し、そして受難に関する記述が多く、それらはイエスが地上においていかなる働きをされたかという観点から記されたと考えられます。

マルコにおいて、イエスのメッセージの中心は神の国の到来とされます。イエスは宣教開始に際して「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」と仰いました(マルコ1:15)。

ポイント3:ルカによる福音書

「エルサレム史観」

ルカ福音書は使徒言行録と同じ著者によって著されました。両者は連続した一つの文書として読むことができます。ルカ福音書は、使徒言行録とともにエルサレム史観に基づいています。

ルカ福音書ではイエスがガリラヤからエルサレムへ向かう途上の記録が詳述され、使徒言行録では使徒たちがエルサレムから出発して宣教します。エルサレムこそがキリスト教の起点であり終点であるということです。

【特徴1】聖霊の重視

ルカ福音書の著者は、聖霊を重視します。聖霊に満たされたイエスはガリラヤで福音を語り、昇天後には神のもとから弟子たちに聖霊を送りました。

【特徴2】悔い改めの重視

著者はまた、悔い改めを重視します。イエスは、自身が来られたのは「罪人を招いて悔い改めさせるためである」と仰いました(ルカ5:32)。

まとめ

この動画では、共観福音書の特徴をご紹介しました。次回はヨハネによる福音書についても学んでまいります。それらの特徴を踏まえて、各福音書を比較してみると、新たな発見があるかもしれません。

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