【ワンポイント解説】過越の祭りとは

この記事のポイント

・ユダヤ民族の救済を記念する祭り
・子供たちに語り伝えるための祭り
・約束の地に帰る願いで終わる祭り

ユダヤ人たちは、毎年3~4月頃に「過越の祭」を祝います。世界中に離散して暮らすユダヤ人たちが、民族意識を保つことができた秘密は、この祭にあるとも言われます。

ポイント1:神様からの永久の命令

エジプトで奴隷となっていたイスラエルの民を、神は救われました。紅海が割れ、その中をユダヤ人たちが通る場面は、何度も映画になっています。彼らがエジプトを出発する夜、神は不思議な命令をお与えになりました。家ごとに小羊を殺し、その血を鴨居と門の柱に塗るようにというのです。

その夜、エジプトを襲った災いは、血が塗られた家を「過ぎ越し」、イスラエルの民は救われました。この事件を記念するのが「過越の祭」です。

あなたがたはこの事を、あなたと子孫のための定めとして、永久に守らなければならない。(出エジプト記 12:24)

ポイント2:家からパン種を取り除く

エジプトを脱出した日の朝、彼らはとても急いでいたのでパンを発酵させないまま食べたと、聖書は記しています。

そこでユダヤ人たちは、1週間続く過越の祭の間は、小麦粉を発酵させずに焼いた「マッツァ」と呼ばれる特別なパンを食べます。祭の前になると、家中の小麦粉製品を食べてしまうか、家の外で焼き捨てます。日本でお正月の前に「大掃除」をするのと、少し似ています。

そして、祭の1週間はケーキやパン類の販売が禁じられるので、レストランやハンバーガー店、そしてお菓子屋さんも、工夫を凝らした特別メニューを提供します。

ポイント3:過越の食事は子供が主役

祭の最も重要な行事は、最初の夜に行われる「過越の食事」です。食事は「ハガダー」と呼ばれる14項目の式次第に沿って進められますが、その中でも、最も重要なのが5つ目にある「マギード」、物語という部分です。

聖書の言葉を読んでみましょう。

もし、あなたがたの子供たちが『この儀式はどんな意味ですか』と問うならば、あなたがたは言いなさい、『これは主の過越の犠牲である。エジプトびとを撃たれたとき、エジプトにいたイスラエルの人々の家を過ぎ越して、われわれの家を救われたのである』」。・・・・(出エジプト記 12:26-27)

そこで、子供が親に4つの質問をするのですが、それは「マ・ニシュタナ」という歌になっています。

マ・ニシュタナ ma nishtanah

なぜこの夜は他の夜と違うの?
他の夜はいろんなパンも食べるのに、なぜ今夜は種入れぬパンだけ?
他の夜はいろんな野菜を食べるのに、なぜ今夜は苦菜だけ?
他の夜は一度も浸して食べないのに、なぜ今夜は二度も浸すの?
他の夜はどんな姿勢でも良いのに、なぜ今夜は寄りかかって食べるの?

そして親は、エジプト脱出の物語を語ります。この祭は、親から子へと民族の記憶を語り継ぐ祭なのです。子供たちが退屈しないように、甘いもの、苦いものを食べながら、歌や宝探しもあって、過越しの食事は夜遅くまで続きます。

ポイント4:キリスト教との意外な関係

現代のキリスト教では過越の祭を祝いませんが、初期のキリスト教徒はこの祭を大切に祝っていました。それは、イエスも最後の夜に、弟子たちと過越の食事をされたからです。

イエスは言われた、「市内にはいり、かねて話してある人の所に行って言いなさい、『先生が、わたしの時が近づいた、あなたの家で弟子たちと一緒に過越を守ろうと、言っておられます』」。弟子たちはイエスが命じられたとおりにして、過越の用意をした。(マタイによる福音書26:18-19)

その翌日、イエスは十字架で処刑されてしまいます。しかし、小羊の血によって災いがイスラエルの人々の家を「過越し」たように、キリストの血によって人々が罪から救われるのだと、新約聖書は教えています。

新しい粉のかたまりになるために、古いパン種を取り除きなさい。あなたがたは、事実パン種のない者なのだから。わたしたちの過越の小羊であるキリストは、すでにほふられたのだ。(1コリント5:7)

祭の最後に、ユダヤ人たちは「来年こそはエルサレムで」(ラシャナ・ハバ、ビルシャライム)と唱和します。彼らは、エルサレムから遠く離れて暮らす間も、毎年毎年、この言葉を唱え続けてきました。そして約2千年の時が流れ、今や彼らはエルサレムに帰り、この祭を祝っています。

まとめ

以上、過越の祭りについてご紹介しました。

・ユダヤ民族の救済を記念する祭り
・子供たちに語り伝えるための祭り
・約束の地に帰る願いで終わる祭り

過越の祭はとても興味深いので、機会があればぜひ体験してみて下さい。

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