【ワンポイント解説】プリムの祭りとは
この記事のポイント
・旧約聖書に最後に収録された書、エステル記
・美しい女性エステルが民族の苦難を救った
・今もユダヤ人たちが守るエステルらの墓がイランに!
毎年2~3月頃にユダヤ人たちが祝う「プリム」という楽しい祭があります。旧約聖書の「エステル記」から、その由来をまなんでみましょう。
ポイント1:最後に旧約聖書に加えられた書
世界最古の旧約聖書写本である「死海文書」をご存じでしょうか。「死海文書」はイスラエルで発見された、約2千年前の聖書写本で、つい最近になって発見され、今なお解析が進んでいます。
この膨大な写本の中には、エステル記は含まれていません。それは、この書が旧約聖書の39の書物のうちで、最も最後に収録されたからなのです。
プリムの祭の最も重要な行事は、会堂でエステル記を朗読することです。(ちなみに、エステル記を書いた特別な巻物には美しい装飾がされており、これをメギラーと言います。)
エステル記には、紀元前500年ごろにペルシャ帝国で起こった事件が記されています。
ポイント2:悪いハマンと王妃エステルの対決
当時、王妃だったエステルという女性はユダヤ人でした。しかし、育ての親であるモルデカイの勧めで自分がユダヤ人であることを隠して王妃になっていたのです。そこに登場するのが、腹黒いハマン…。(プリムの祭にエステル記を朗読する時は、「ハマン」という名前が出てくると、騒がしい音を立てるのが伝統があります。)
ハマンはペルシャ帝国の王様に信頼されている最高の大臣でした。ところが彼は、王様にユダヤ人を皆殺しにすることを勧め、王はそれを承認します。彼はくじ引きで、アダルの月の13日という日を選んで、その日にユダヤ人を殺せという王の命令を勝手に出してしまいます。
困ったエステルは、決死の覚悟で王のアハシュエロス王の所に行きます。
……そしてわたしは法律にそむくことですが王のもとに行きます。わたしがもし死なねばならないのなら、死にます。(エステル4:16)
彼女は自分がユダヤ人であることを王に明かし、ハマンが自分たちの民族を皆殺しにしようとしていると訴えました。それを聞いて怒った王は、ハマンを死刑にして、代わりにユダヤ人のモルデカイを最高の大臣に任命したのです。
ポイント3:絶滅から救われたユダヤ人たち
しかし、ユダヤ人を殺せという王の命令は、もう取り消すことができません。
……アハシュエロス王は王妃エステルとユダヤ人モルデカイに言った、「……王の名をもって書き、王の指輪をもって印を押した書はだれも取り消すことができない」。(エステル8:7-8)
そこで、エステルとモルデカイは、アダルの月の13日に、ユダヤ人たちを殺そうとする敵に反撃せよ、という命令をユダヤ人に出します。そしてこの日は各地で戦いが起こり、敵を一掃したユダヤ人たちは、この日を祭として祝うようになったのでした。
……これらのプリムの日がユダヤ人のうちに廃せられることのないようにし、またこの記念がその子孫の中に絶えることのないようにした。(エステル9:28)
ポイント4:物語は今なお現在進行形
さて、この事件が実際にあったことを疑う人々もいますが、イランにはエステルとモルデカイのお墓だと言われる場所があり、現地のユダヤ人たちが大切に守っています。
また、アラブ世界では、この物語がよく知られていて、スタバのマークの女性が実はエステルだという噂が広がったこともありました(※デザイナーは否定しています)。
ユダヤ人を絶滅させようとする人々も、後を絶ちません。ペルシャ帝国と同じ場所にあるイランは、今なおユダヤ人国家を滅ぼすと公言しています。
まとめ
・旧約聖書に最後に収録された書、エステル記
・美しい女性エステルが民族の苦難を救った
・今もユダヤ人たちが守るエステルらの墓がイランに!
ともあれ、現代イスラエルでは、プリムは楽しい祭。この日になると、空港や郵便局などでも、スタッフがちょっとした仮装をしたりします。そして、この祭が終わると、乾燥地帯にあるイスラエルにも雨が降り、荒野に花が咲き乱れます。プリムはイスラエルに春の訪れを告げる祭でもあるのです。