【ワンポイント解説】聖書に見る天国

この記事のポイント

・イエスは「天国」が地に到来すると教えた
・「天国」は「神の国」の言い換え
・天国到来の鍵は「いまだ成就していないこと」にあり

死後に「行く」世界というイメージが強い天国ですが、イエスは天国が地上に「来る」と説きました。

「神の国」の言い換えとして「天の国」

現代の日本語で「天国」というと、それは「天国にいる父」のように、すでに死んだ人がいる場所を指します。でも、新約聖書の中で使われている「天国」には、全く違うニュアンスがあります。

天国と訳されている言葉の元の意味は「神の国」あるいは「神の王国」です。

ユダヤ人たちは神様に敬意を示すため、「神」とは直接言わず、他の言葉で言い換える風習を持っていました。そのため、同義語として「天の王国」や「天国」、あるいは「御国」などが使われました。

「神の王国」とは程遠い状況下でイエスが登場

「神の王国」は、神が支配する世界のことですが、新約聖書の書かれた時代、ユダヤ地方はローマ帝国の支配下にあり、ユダヤ人の間でも貧富の格差が激しく、権力を持った人々が弱い人々を苦しめている状況でした。

そこに現れたイエスが最初に「悔い改めよ、天国は近づいた」(マタイ3:2)と語りました。

「天国」は到来するという教え

「天国に行ける」と教えたのではなく、天国が「やって来る」と教えたことに注意しましょう。また、イエスは「御国が来ますように」、つまり天国が「来る」ように祈りなさいとも教えています。

悪者が支配するこの世界に、神様が王様として来られて、支配権を確立されること。そういう世界に「行く」のではなく、そういう世界が「来る」というのが、イエスの教えでした。これは旧約聖書から一貫した聖書の教えです。

「天国」到来の鍵は、いまだ成就していないこと

さて、イエスが「天国は近づいた」と教えてから、二千年の時が流れました。でも、世界は問題だらけです。天国は、いったい、いつ来るのでしょうか。

新約聖書は、今の時代に「すでに」成就したことと「いまだ」成就していないことがあると教えています。天国が来ると信じる人は、その実現のために働く喜びがあります。

天国が来る前にこの世を去ることになっても心配は不要です。その仕事は次の人々に引き継がれ、最後に完成するのを待つことになるからです。ですので、天国がこの地上に「来る」ことを忘れてはなりません。

キリスト教の慈善活動の背景に、天国の到来という思想も

キリスト教が、宣教をするだけでなく、病院や学校を建てるなど、慈善活動に力を入れるのは、天国をこの地上に実現するための小さな一歩とも言えるでしょう。

まとめ

・イエスは「天国」が地に到来すると教えた
・「天国」は「神の国」の言い換え
・天国到来の鍵は「すでに成就したこと」ではなく、「いまだ成就していないこと」にあり

私たちも天国が来る日を待ち望みつつ、完成に向かって働きたいですね。

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