【ワンポイント解説】イエスとヨシュアは同じ名前?
この記事のポイント
・イエスとヨシュアは同じ名前!
・ヨシュアはヘブライ語表記、イエスはギリシャ語表記 という差がある
・マリアとミリアムも同じ名前!
聖書には、旧約聖書と新約聖書がありますが、旧約聖書はヘブライ語、新約聖書はギリシャ語で書かれています。そのため、旧約と新約では一見すると違う名前が、実は同じ名前だということもあるのです。今回はそんな人物名と、それらの人物の概要をご紹介します。
ポイント1:ミリヤムとマリア ―― 歌った女性たち
ヘブライ語でミリヤム מִרְיָם はギリシャ語のマリアΜαρίαと同じ名前です。
ミリヤム מִרְיָם
まず旧約聖書のミリヤムから見ていきましょう。出エジプト記に登場するミリヤムはモーセとアロンの姉で、レビ族の(女)預言者です。
神に導かれたモーセとイスラエルの民が紅海を渡り、エジプトから追って来たパロと騎兵たちから逃れた時、ミリヤムはタンバリンを取って踊りながらイスラエルの女性たちと一緒に神を賛美して歌います。(「ミリヤムの賛美」出エジプト記15:20)
マリアΜαρία
一方、新約聖書で登場するイエスの母マリアは、御使いガブリエルから聖霊によって神の子を身ごもると告げられた後、親戚のエリサベツに会いに行った時に神に祈り、ほめたたえつつ歌います。エルサレムの郊外にある訪問教会ではこのマリヤの讃歌が42か国語で壁に飾られています。(「マリアの讃歌」ルカ1:46―55)
ポイント2:ヨシュアとイエス ―― 神と民を繋いだ者
ヘブライ語でヨシュア(イェホーシュア)יְהוֹשֻׁעַ はギリシャ語のイエス(イエス―ス)Ίησοῦς と同じ名前です。
ヨシュア(イェホーシュア)יְהוֹשֻׁעַ
旧約聖書に登場するヌンの子ヨシュアは、イスラエルの民と約束の地であるカナンを目指したモーセの後継者です。(ヨシュア記1:1)カナンの地を攻略したヨシュアは、イスラエルの12部族にそれぞれ所有地を分配しました。また、イスラエルの民の中から偶像を取り除き、主である神に聞き従うことを定めと掟として神と民との間に契約を結ばせました。
イエス(イエス―ス)Ίησοῦς
一方、新約聖書に登場するイエスの名前は「神は救う」という意味を持っています。イエスは旧約聖書の預言者たちによって伝えられていた預言(ミカ書5:2など)のとおりにベツレヘムで生まれます。幼少期はガリラヤ地方のナザレで育ちナザレのイエスとも呼ばれました(「この方はナザレ人と呼ばれる」マタイ2:23)。
30歳以降の公生涯では神の国と福音を伝えながら、神と人とをつなぐために十字架に架かられました。そして復活して天へ上げられた後にも、彼を信じた人々に永遠のいのちと神の国の住まいを準備しておられます。
ポイント3:サウルとパウロ?―― サウル = サウロ = パウロ?
ヘブライ語のサウル(シャウール) שָׁאוּל はギリシャ語のサウロと同じ名前です。使徒パウロ Παῦλος のヘブライ語名がサウル שָׁאוּל (ギリシャ語表記ではサウロ)なので、サウルとパウロは同じ名前…と言いたいところですが、厳密には同じ名前ではありません。
サウルはヘブライ語で「神に尋ね求める」を意味する一方、パウロはギリシャ語で「小さい者」を意味するからです。
サウル(シャウール) שָׁאוּל
旧約聖書に登場するサウルは、イスラエル王国最初の王です。ヤコブから生まれたイスラエル12部族の内、ベニヤミン族の出身で預言者サムエルに油を注がれて王となりました。しかし、サウルが神のことばに聞き従わず、神がサウルを離れたため、預言者サムエルはダビデにも油を注いだのです。
サウルは民の人気を集めるダビデを妬み、執拗に命を狙いますが、ダビデの命は神に守られました。その後もわだかまりは消えず、サウルはペリシテ人との戦いで自ら剣の上に倒れる悲劇的な最期を迎えました。
パウロ Παῦλος
新約聖書に登場するパウロは、律法を守ることに熱心であったパリサイ派の人で、同じくベニヤミン族の出身です。元々パウロはイエスを信じる者を激しく迫害していましたが、劇的な回心をし、主の弟子として活躍しました。
彼は迫害に赴く道中、突然、天からの光と共に「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか」と呼び掛ける声を聞きます。パウロが「主よ、あなたは、どなたですか」と尋ねると、「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。」(使徒9:4―5)という神の答を得ます。
ちなみに「目から鱗」という諺は、この光によって見えなくなったパウロの目から鱗のようなものが落ち、再び目が見えるようになった出来事(使徒9:18)からきています。
まとめ
以上、旧約聖書から新約聖書の時代まで、変わらずに使われ続けてきたヘブライ語の名前があること。そして、新約聖書の時代には当時の公用語として用いられていたギリシャ語の影響でヘブライ語とギリシャ語という2つの名前を持っている人々がいたことをご紹介しました。
・ヨシュアとイエスは同じ名前(ヨシュアはヘブライ語表記、イエスはギリシャ語表記)
・ミリアムとマリアも同じ名前(ミリアムはヘブライ語表記、マリアはギリシャ語表記)
・サウルとサウロは同じ名前(サウルがヘブライ語表記、サウロがギリシャ語表記)
・サウロとパウロは違う意味の名前!(サウロは「神に尋ね求める」の意、パウロは「小さい者」の意)
今、世界で使われている言語はおよそ6900言語と言われています。皆さんも色々な国の人々との交流することで、どんどん名前が増えていくかもしれませんね!