【キリスト教史講座 #00】キリスト教史とは

この回のポイント

・視点1:教会史は聖書の続編?
・視点2:神の歴史か人の歴史か?
・視点3:欧米中心から非西欧へ
・視点4:ユダヤ的な視点の回復
・講座の特徴と予定

はじめに

イエス・キリストの復活からおよそ2000年。彼の教えは弟子たちによって世界に伝えられました。しかし、その間人々はどのように信仰を守ってきたのでしょうか。

時代とともに変化してきたキリスト教の姿に迫る「10分みるだけキリスト教史」シリーズ。今回は、イントロダクションとして、キリスト教史を読み解くための4つの視点をご紹介します。

視点1:教会史は聖書の続編?

 ●  直線的な聖書の時間観

古代ギリシャやインドの世界観は「永劫回帰」。つまり世界は同じことの繰り返しだと考えるため、宗教は歴史を重視しません。

それに対して、聖書は世界にはじめと終わりがあると考えます。最初は神が完全な形で世界と人を創造されますが、人は堕落し、世界は滅びに直面します。

しかし、神はイエス・キリストを世に送られ、最終的に御国が完成します。

 ●  繰り返しもあるが、終末に向かって進む

とはいえ、聖書には繰り返しも見られます。創世記に由来する1週間は、7日ごとに繰り返し、旧約聖書で定められたイスラエルの祭りも、毎年繰り返し祝います。

また、旧約聖書には「日の下には新しいものはない」(伝1:9)という言葉もありました。聖書の時間は螺旋階段のように、繰り返しながらも、終りに向かって進んでいるのです。

世界がある方向に進んでいるとすれば、歴史を記録することには大きな意味があります。

そのため、新約聖書時代以後もキリスト教世界では、教会の歴史をまとめる試みが積極的になされてきました。

視点2:神の歴史か人の歴史か?

 ●  神による人類救済の歴史

キリスト教の歴史を初めて本格的に論じたのは、エウセビオス(c. 263–339)という人物です。彼は「教会史の父」と呼ばれ、使徒時代から4世紀にいたる教会の歴史をまとめました。そして、その教会の歴史を「神の勝利」と意味づけました。

その後に活躍した著名な神学者アウグスティヌス(354-430)も、著書『神の国』で「神の国」と「地の国」の歴史について論じ、世界の終わりについても述べています。

彼らは、教会史を「神による人類救済の歴史」と認識していました。それは「信仰者だけが理解できる事柄」であり、そこに批判や議論の余地はなかったのです。

 ●  神の歴史への介入を認める「歴史神学」

ところが、近代以降、進化論やマルクスの唯物史観などが登場し、学問の世界はキリスト教から分離していきます。そして19世紀になると、一般の歴史学の方法論が、キリスト教史研究にも影響を与えるようになりました。

神学者のエルンスト・トレルチ(1865-1923)は、歴史学的な批判に耐えられる方法で、教会史を研究すべきだと主張しています。

では、キリスト教の歴史は「神の人類救済の歴史」なのか、それとも「人が教会を運営した歴史」なのでしょうか。現代の神学では、歴史神学の領域でキリスト教史を扱います。

それは、歴史に対する神の何らかの介入を認めた上で、そこから歴史の根源的な意味、現在の自分の生き方、将来について考える営みなのです。

視点3:欧米中心から非西欧へ

 ●  見直される西欧中心の時代区分

イタリアの哲学者クローチェは「歴史を思惟することは確かに之を時代区分することである。」と言いました。つまり、歴史認識によって、時代区分が異なってくるということです。

教会史は初め、時代を区分せず、世紀順に論じられていましたが、19世紀になると、古代、中世、近代という三つの時代に区分する方法が採られるようになります。この区分は今日の教会史でも用いられています。

ただ、これは西欧の政治・文化を三時代に区分する方法に基づいており、西欧ブルジョアジーの歴史観を反映したものだという批判が出てきました。そこで、近年では非欧米世界のキリスト教の視点に基づく時代区分も提唱されています。

 ●  非西欧世界のキリスト教の伸長

キリスト教は長年ヨーロッパを中心に発展してきましたが、第二次世界大戦以降、アフリカやラテンアメリカ、アジアなど非西欧のキリスト教が存在感を増しています。それに伴い、神学やキリスト教の歴史を非西欧世界の視点から捉え直す動きも活発化しているのです。

視点4:ユダヤ的な視点の回復

 ●  キリスト教のルーツはユダヤ教

キリスト教史における欧米中心の傾向は、ユダヤ教やユダヤ人への無関心としても現れてきました。しかし、キリスト教とユダヤ教・ユダヤ人の関係はキリスト教史における重要なテーマだと考える人が増えています。

というのも、第一に、キリスト教のルーツはユダヤ教にあるからです。イエスもユダヤ人でしたし、その弟子たちもユダヤ人でした。イエスはユダヤ教を改革することを目指しており、キリスト教の創始を目指してはいなかったという見解もあります。

 ●  キリスト教史が抱える反ユダヤ主義の歴史に向き合う必要

第二に、キリスト教史が抱える反ユダヤ主義の歴史に向き合う必要があります。ユダヤ人はイエスを十字架にかけて殺した「キリスト殺し」であるとして、ヨーロッパで何世紀もの間、迫害されてきました。

キリスト教における反ユダヤ主義は、やがて人種としてのユダヤ人への偏見を生み出し、最終的にはホロコーストを引き起こしたとも言われています。

このため、ユダヤ教やユダヤ人との関係も、キリスト教史の重要な主題のひとつなのです。

講座の特徴と予定

 ●  イントロダクション

0:キリスト教史とは

以上、キリスト教史を読み解く4つの視点をご紹介しました。「10分みるだけ キリスト教史」シリーズでは、欧米を中心としたキリスト教の歴史に加え、従来あまり扱われてこなかった非西欧のキリスト教の歴史、キリスト教とユダヤ人との関係もご紹介してまいります。そして、キリスト教信仰の多様な側面に触れることを目指します。

 ●  西欧のキリスト教の歴史

1:古代キリスト教
2:中世キリスト教
3:近世キリスト教
4:近現代キリスト教

そこで、第1回から第4回までは、長きにわたってキリスト教文化の中心としての役割を果たしてきたヨーロッパを中心としたキリスト教の歴史を学びます。キリスト教が、どのように変化してきたのか、その評価されるべき点と、反省すべき点とに注目しながら、歴史的歩みを振り返ります。

 ●  非西欧のキリスト教の歴史

5:正教会の歴史
6:アジア、アフリカ、ラテンアメリカのキリスト教の歴史
7:日本のキリスト教の歴史(I)
8:日本のキリスト教の歴史(II)

第5回から第8回までは、非西欧地域から見たキリスト教の歴史を学びます。従来とは違う角度からキリスト教の歴史に光を当てることで、キリスト教信仰のダイナミズムが浮かび上がってくるはずです。日本のキリスト教の歴史もここで扱います。キリスト教はわたしたちにも身近な信仰なのです。

 ●  キリスト教とユダヤ人の歴史

9:反ユダヤ主義と反キリストの歴史
10:メシアニック・ジューの登場とキリスト教

第9回と第10回は、キリスト教とユダヤ人の歴史をご紹介します。キリスト教がユダヤ教と対立を深めていく中で、ユダヤ人であることとイエスを救世主と認めることは両立しえないという認識が生み出されました。

しかし、近代に入り、メシアニック・ジューと呼ばれる、イエスを救世主として受け入れるユダヤ人が登場します。彼らの登場は、ユダヤ人であることとイエスを救世主として受け入れることは両立しないという常識を覆し、キリスト教の新しい地平を拓いています。

まとめ

「10分みるだけ キリスト教史」シリーズは、2000年以上のキリストの歴史を、たった10分×10本で、しかも多角的に学べるシリーズです。さあ、キリスト教の歴史を辿る旅にご一緒に出かけてみませんか?

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