【聖書講座 #07】北王国
この回のポイント
ダビデ王の後継者ソロモンは第一神殿を建設して神に奉献しますが、彼の死後、国は南北に分裂してしまいます。
分裂で神殿を失った北王国は、偶像礼拝に陥りましたが、エリヤ、エリシャ、ホセア、アモスなどの預言者が現れて、真の神を礼拝するよう、王や民に呼びかけました。
特に、エリヤはメシアの先駆者と見られており、バプテスマのヨハネもエリヤの霊を持っていたとされます。預言者は、神の怒りや愛を人々に伝える役割を果たしました。
ダビデ王の後継者、ソロモン
前回は、ダビデ王が約40年にわたって国を支配したことを「サムエル記」を中心に学びましたが、今回は、ソロモンが王になり、イスラエルが最も繁栄した時代について「列王記」の上下巻から学んでゆきましょう。
ダビデの息子ソロモンは油を注がれ、前961年にダビデに続いて王位を継承しました。古代イスラエルでは、油を注いで王を任命したのです。(王上1:45)
ソロモンの知恵
ある日、ソロモンの夢の中に神が現われ、「あなたに何を与えようか、求めなさい」と言われたので、ソロモンは民の訴えを聞き分ける知恵を求めました。そこで神は、ソロモンに知恵をお与えになりました。(王上3:5~12)
ある時、2人の女がひとりの赤ちゃんを連れて来て「これは自分の子供です」とそれぞれが訴えました。
するとソロモン王は剣(つるぎ)を持って来させ「子を2つに分けて、半分をこちらに、半分をあちらに与えよ」と命じました。ひとりの女はそれに同意しましたが、もうひとりの女は、子供を相手の女に渡すようにと言います。
そこでソロモンは、どちらが本当の母親か知ったのでした。(王上3:16~27)
知恵文学
ソロモンは大変賢い人で、彼が書いたとされる「箴言」と「伝道の書」は、今日の私たちにも役立つ教訓が多く記されています。
これに「ヨブ記」を加え「知恵文学」と言います。また、「雅歌」もソロモンの作と伝えられています。ヨブ記は作者不詳の書ですが、正しい人が苦難に遭う理由を論じており、とても興味深い内容です。
ソロモンが建てた、第一神殿
さて、ソロモン王は、七年かけて壮麗な神殿を建てました。彼はレバノンから最上の木材を輸入し、職人を招きました。(王上5:15~31)
そして神殿が完成した時、シナイ山からずっと受け継がれて来た「契約の箱」が、初めて建物の中に安置されたのです。(王上6:19、8:6~9)
ソロモンは、イスラエル人だけでなく、どんな民族の人であっても、この神殿でささげた祈りを聞いてくださるようにと、神に祈りました。この神殿を「第一神殿」と言います。
ソロモンの死後、王国が南北に分裂
ソロモンの時代、国はとても栄え、多くの女性が彼の周囲に集まって来たのですが、彼女たちは異国の神々をエルサレムに持ちこんできました。これは神を怒らせました。(シバの女王も訪問)
そればかりではありません。贅沢な王や貴族の暮らしを支えるため、民は重税に苦しみました。
そして、BC922年にソロモンがその生涯を終えると、王国は南北に分裂してしまいました。(王上11:43、12章)皆さんは、イスラエルに十二の部族があったことを覚えていらっしゃるでしょうか。
ユダ族とベニヤミン族は南に、残りの十部族は北に分かれました。北を支配したのはヤラベアム王で、その国を「イスラエル王国」、南を支配したのはレハベアム王で、その国を「ユダ王国」と言います。
ここで、エルサレムの神殿は、南のユダ王国の領土になりました。
神殿を失った北王国(イスラエル王国)のヤラベアム王は困りました。そこで王は、ベテルとダンに礼拝所を設けて金の子牛を祀り、それを神と称して民に礼拝させたのでした。(王上12:28~33)また、周囲の人々が信じていたバアルという神も、礼拝するようになりました。
エリヤが450人のバアルの預言者と対決!
北王国の預言者たちは、真の神に帰るようにと人々に説きました。そして、エリヤという力ある預言者は、勇敢にも、たったひとりで450人のバアルの預言者と対決したのです。(王上18:19)
彼らはカルメル山という山に登り、それぞれ祭壇に、殺した牛を置きました。バアルの預言者は朝から何時間も祈り、神に叫び求めましたが、何も起こりません。午後になって、エリヤは人々を集めて短く祈りました。
すると、天から火が下って、祭壇の牛を焼き尽くし、人々は神を信じたのです。(王上18:38~39)
北王国の預言者たち
聖書の記述は、ここから「列王記下」と呼ばれる部分に入ります。
エリヤの後継者となったエリシャという預言者もまた、北王国で活動しました。彼がシリアのナアマンという将軍の皮膚病を癒した話は有名です。(王下5:14)
しかし、北王国の歴代の王たちは、ほとんどが神を信ずることがなく、神の怒りを買い、国はますます荒廃していきました。
その時代に北王国の預言者が書いたとされる4つの書が聖書に収録されています。
「ホセア書」「アモス書」「オバデヤ書」
「ホセア書」は、神とイスラエルの関係を、夫と妻の関係にたとえて描く異色の書です。ホセアは淫行の女ゴメルを娶り、妻が不貞を働き続けても、神の命令により、彼女を買い戻します。
これは、イスラエルが神を忘れてバアル神の所に行っても、神は永遠の愛によりイスラエルを買い戻される、という意味なのです。
「アモス書」には、神が怒りのあまりイスラエルを滅ぼそうとされたことが記されています。
その時、預言者アモスはこう祈ります。
「主なる神よ、どうぞ、やめてください。ヤコブは小さいものです。どうして立つことができましょう」。(アモ7:2)
すると神は、その災いを思い返されます。(アモ7:3)預言者が執り成して、神が御心を変えられる、というのは、旧約聖書の重要な主題です。
「オバデヤ書」はエドム人に対する預言が書かれた短い書で、エリヤと同時代に活動した人物が書いたと言われています。
「ヨナ書」
「ヨナ書」は、短くて親しみやすい書です。アッシリヤ帝国のニネベという町は、悪に満ちていたため、神は預言者ヨナにニネベに行って、神の言葉を伝えるようにと命じられます。
ヨナはすぐ船に乗り、ニネベとは反対の方向に逃げ出します。
ところが、神は海上に大風を起こされたので船は沈みそうになりました。船乗りたちは海を鎮めるために、やむなくヨナを海に投げ込むと、大きな魚が来てヨナを飲み込んでしまいます。
ヨナは三日三晩、大魚の腹の中にいましたが、神が命じると魚はヨナを海岸に吐き出しました。
ヨナは神に命じられたとおりに直ちにニネベに行き、人々に向かって「40日を経たらニネベは滅びる」と言います。すると人々は悔い改め、神はニネベを赦されました。
これを見たヨナは、それでは自分の言葉が嘘になると怒るのですが、神は「この大きな町ニネベを、惜しまないでいられようか」と言い、ヨナをなだめます。
アッシリアがイスラエルを滅ぼす
ヨナが神に逆らった理由は、その後の歴史を見ればわかる、と考える人もいます。ニネベは、アッシリヤ帝国の首都となった町でした。このアッシリヤは、後にイスラエルを滅ぼします。BC722年のことでした。(列王記下 18:11-12)
さて、イスラエルの民は、それからどこへ行ったのでしょうか。彼らの行方は杳として知れません。彼らは「失われた十部族」と呼ばれ、歴史の大きな謎となっています。
次回予告
今回は、ダビデ王の後継者ソロモン王によって国が繁栄したあと、国が分裂し、北のイスラエル王国が約200年後に滅びたことを学びました。次回は、南のユダ王国について学んでゆきましょう。